事業計画書


資金調達: VCがカネを出す条件

こんにちは、経営コンサルタントの入野です。(プロフィールはこちら

VC投資だけでなく、制度融資や助成金も含めて、
資金調達の考え方についての要点をまとめておきます。
 
 
 

事業計画書における資金調達の位置づけ

資金調達については「15.財務計画」のサブセクションで記述します。

  1. エグゼクティブサマリー
  2. 事業立ち上げの経緯
  3. マネジメントチーム
  4. 会社概要
  5. 経営理念・事業理念
  6. 商品・サービスの概要
  7. 儲けの仕組み
  8. 市場および競合の分析
  9. マーケティングと販売戦略
  10. オペレーション計画
  11. 人事戦略
  12. 立ち上げ戦術
  13. 成長戦略
  14. 出口戦略
  15. 財務計画:
    - 売上予測
    - コスト計画
    - 資金繰り予測
    - 資本政策
  16. リスク管理
  17. プロジェクト管理

 
 
 

初級者によくある間違い

■ 実現可能性で資金調達ソースの優先順位づけをしていない

どれぐらいの確率で資金調達できるのかという観点で、資金調達ソースの優先順位をつけていない企業がたまにありますが、あまりよくありません。

資金調達タスクでは、申請書や事業計画書の作成などに時間や工数、コストがかかる上、特に金融機関からの資金調達では「相手にされないレベル」というのが存在するからです。

ベンチャーの資金調達の方法はいろいろありますが、
一般的に確率が高い順に挙げるとすると、

  1. ハローワークの受給資格者創業支援助成金
  2. 親戚・知人からの出資
  3. 厚労省の中小企業基盤人材確保助成金
  4. 国民金融公庫の新創業融資 or 新企業育成貸付
  5. エンジェルからの出資・借入:種類株、少人数私募債なども
  6. 中小企業基盤機構の事業化助成金
  7. 経産省の新連携助成金
  8. ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
  9. 信用金庫、地銀からの借入
  10. 都銀からの借入

可能性の低い資金調達先にいくらアプローチしても時間と工数、コストを浪費するだけなので、優先順位をつけましょう。

 
 

■ 「いつ燃え尽きるか」を把握していない

資金調達を考える際にまず最初に考えるべきは、
「このままの収入・支出が続くといつキャッシュがゼロになるか」。

ベンチャーは起業後すぐキャッシュインが十分に発生するとは限らず、
資本金を食いつぶす期間があるのケースが多いのですが、
「いつキャッシュがゼロになりますか?」と聞いても
即答できる経営者は意外と少ないのです。

Burn Rate(≒いつ現預金がゼロになるか?)を使い、
「燃え尽きるタイムリミット」を把握します。

月次Burn Rate = 現預金残高 ÷ 月あたりのマイナスキャッシュフロー
を計算しておくことが重要です。

 
 

■ 計算結果しか書いていない

予想PL・BSをExcelで計算して計算結果だけを貼り付けている事業計画書をよく見ますが、あまりよくありません。

金融のプロ中のプロであろうと、正直なところ、計算結果だけを見てもよく理解できないからです。

Excelの計算結果だけを貼り付けている場合、読み手が勝手に数字を解釈してしまい、多くの場合はポジティブな解釈よりもどちらかというとネガティブな解釈しかされません。

以下を明記してあげましょう。

  • 数字の前提となっている事業のマイルストーン達成度
  • 数字の根拠となっている仮説
  • 計算結果だけでなく計算ロジック
  • 計算結果の解釈

 
 

■ 必要金額の内訳を答えられない

「8000万円お願いします」と頼んでいるのに、
「8000万円の内訳は?」と聞かれてもハッキリと答えられないケース。

以下の項目はを明確に答えられるようにしましょう。

  • 資金使途ごとの内訳金額
  • 最大の費用項目:
    結局、何に最もコストがかかる案件なのか
  • カットできる項目:
    全額は投融資できない場合、投資抑制・経費カットするとすればどの部分か
  • のりしろ:
    コスト見積の超過リスクや心の余裕を考慮して余分に調達しておきたい金額はいくらか?
    余裕を持って資金調達をするのは健全なことなので、聞かれれば正直に胸を張って答えられるように。

「8000万円の内訳は?」と聞かれたら、答えはこんな感じです。

『4000万は設備投資。2000万は運転資金。
設備投資で今回大きいのは店舗取得・内装工事に2000万。
運転資金で大きいのは人件費月50万の人材×6人月です。』

 
 
 

中級者でもよくある間違い

■ 1~3ヶ月の短期的な資金繰りが厳しい時に助成金に期待する

創業や中小企業支援のための助成金は数多くあります

しかし、助成金の問題は:

  • キャッシュは先出し:
    設備投資や経費購入の時点では会社がキャッシュ支出を一時的に負担して先出ししなければならない。
  • とにかく時間がかかる:
    助成金が入金されるのは申請から最低でも3-4ヶ月。
    6ヶ月以上の助成金も。
  • 手間もかかる:
    書類作成や面談出席に工数がかかり、
    キャッシュインフローにつながりやすい営業タスクや技術開発タスクなどの本来やるべきタスクに手が回らないリスクがあります。

    補助金申請タスクを担当する者が営業タスクや技術開発タスクを担当していなくて、本業に支障が出ないのが理想ですが、多くのベンチャーの場合、トップ営業マンの社長しか補助金申請タスクを担当できないのが現実でしょう。

したがって、助成金は1-3ヶ月などの短期の資金繰りには向かないのです。

 
 

■ 1~2ヶ月の短期的な資金繰りとエクイティファイナンスを混同する

資金切れ寸前の土壇場で、VCやエンジェルからのエクイティ投資を探る企業がありますが、あまり得策ではありません。

VCは運転資金が不足しているような企業はそもそも相手しないので、時間をムダにします。
エンジェルから救済してもらったとしても、株式の発行価格や持株比率などで不利な条件を呑まされることも多い。

本来、エクイティファイナンスは中長期的な業務提携や会社の経営権の文脈で考えるべきであって、1-2ヶ月レベルの一時的な資金繰りとは分けて考えるべきです。

さもないと、一時的なピンチのために会社の中長期的な将来に禍根を残します。

 
 

■ 金利の感覚が鈍い

世の中の金利がどれくらいの利率なのかについて感覚が弱く、
過度に借金を怖がってビジネスチャンスを逃してしまったり、
過剰な借金やエクイティ投資を受けてしまう経営者がいます。

貸出利率やエクイティ投資の利率を各種の金融商品と大雑把に比較すると:

  %
30年物日本国債 2.4~2.5
国民金融公庫の貸出利率 2.5~4.0
住宅ローン(5年固定~20年固定) 3.1~4.5
上場企業の一般株主の期待収益率(国内株式) 6.5~9.0
中小企業向けビジネスローン 8.0~18.0
消費者金融(グレーゾーン撤廃後) 15.0~18.0
VCファンドが目標にするIRR 20.0~25.0
VC投資を融資(無担保貸出利率)に換算すると 50.0~60.0
中小企業向けビジネスローン
※節税効果を考慮すると、
1-実効税率30%ならば
8.0~18.0

4.8~10.8

  • 各種の金融商品と比べると、
    国民金融公庫の貸出利率がいかにおトクか
  • 住宅ローンとビジネスローンを比べると、
    中小企業よりサラリーマンのほうが信用力が高い
  • VCファンドの利率の高さを考えると、
    VCのベンチャーに期待するハードルがいかに高いか
  • 節税効果(≒支払利息を損金処理できる)を考慮すると、
    エクイティ投資を受けるより借金したほうが企業全体の資本コスト(≒WACC)は安いこともある

などの金利感覚は持っておく必要があります。

 
 
 

上級者の使うテクニック

■ 資金調達先が金を出す論理をよく理解している

例えば、日系のベンチャーキャピタルが投資する最低条件は3つ:

  1. 売上の伸びがこのペースで伸びるとIPOレベルに届くと投資委員会で合理的に説明できること
    例えば、
    「最近6四半期の売上高のグラフを直線で伸ばすとIPOレベルに売上高がとどく」というようなロジック。
    直線(≒売上高の伸び率が一定)であることが大切です。
    曲線(≒売上高の伸び率が伸び続けている)はロジックに無理があるのでNG
  2. 計画している事業規模がIPOレベルを超えていること
    実際には各市場の上場基準を満たし、経常2億でも上場する企業はあります。
    しかし、計画段階では経常5億以上(≒証券会社が引受を承諾したくなるレベル)を目標に。しかも、計画は下振れするので、実際にはそれ以上の高いハードルを計画しておかねば投資委員会のテーブルにも載らないかもしれません。
  3. ファンドの期限以内でIPOを目指していること
    ファンドの運用期限は通常は5年。延長しても7年。
    計画は遅れるので2年サバを読んで3~5年でIPOをすると言い切るべきです。

これらの他に、VCの行動原理として重要な事項は

  • VCの既存投資先企業とのシナジーが高い企業は
    投資ポートフォリオに入れやすい
  • 誰に紹介された案件かが投資判断に少なからず影響する
  • 株価算定に絶対的な正解はない

などを経験のある経営者はよく理解していて、

  • VCの既存投資先の企業をよく調査しておく
  • 業界に詳しいVCの担当者がコンタクトしてくるように
    プレスリリースを工夫する
  • VCとのコネクションのあるコンサルタントなどに紹介を依頼する
  • たとえ経営者本人に金融知識がなくても、
    Valuationの交渉の時に全くひるまない

 
 

■ 「資金繰に失敗」と「ビジネスモデル構築に失敗」の違い

入出金サイトのバランスが悪くて黒字倒産する企業は確かにありますが、資金繰だけに失敗して倒産する企業は実際には少ないのが現実です。ビジネスモデル≒儲けの仕組さえしっかりしていれば、なんだかんだ不思議と資金調達には成功します。

キャッシュ切れで倒産するベンチャー企業の多くは「資金繰りの失敗」ではなく、

  • 回収する仕組が弱い
  • 良質な顧客層を集客する仕組が弱い
  • 小さくプロトタイプを産むのが下手

などの「儲かる仕組の構築に失敗」した企業です。

ベンチャーを経営していると「来月末の資金繰りがヤバイ!」という状況は一度や二度は必ず経験します。しかし、そんな時でも経験のある経営者は資金繰りに奔走してムダな時間を使うよりも、儲けの仕組の構築に奔走します。

 
 
 

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代表取締役 経営コンサルタント 入野

入野康隆
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  • 日本最大のビジネスプランコンテストで1位2位のワンツーフィニッシュ

  • 国認定「スーパークリエーター」間のビジネスプランコンテストで2位

  • シリコンバレーのビジネスプランコンテストで4位

  • Google検索「事業計画書」No.1

  • 年間300人以上の経営者に会い、100本以上の事業計画をレビュー

  • 東京大学法学部を休学し
    University of British Columbia (カナダ)へ転入・卒業

  • 世界第2位のソフトウェア会社OracleでITコンサルタント、
    外資系コンサルティング会社Headstrongにて経営コンサルタントを経て
    Linzy Consulting株式会社 を設立

  • IT業界から宇宙ビジネスまで
    数社のベンチャー企業、大手企業の取締役・顧問をつとめる

  • ビジネスメディア 「Insight Now」 にビジョナリーに選ばれ
    起業家サイト「Dream Gate」でも高い顧客満足度・相談件数を
    誇るトップアドバイザー

  • 「事業計画」をテーマに
    日本実業出版、日経BPなどに記事を寄稿中

  • 講演実績: 政府系金融機関、証券会社、コンソーシアムなど

  • その他、千に三つの世界での失敗経験は数知れず。。。

  • 記事一覧⇒「リアルな事業計画書の書き方」


 
 
 

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