商品設計: 商材より先に見つけるべきものとは?

商品・サービス設計: 商品より先に見つけるべきものとは?

こんにちは、経営コンサルタントの入野です。

本日は商品・サービスの設計について解説します。

初級者によくある間違い
■ 「No Problem 」

Problemとは、その商品やサービスが解決する問題のことです。

よくある間違いは、商品自体については詳しく書いているけれども、
その商品が解決する問題についてはあまり考えられていない場合があります。

例えば、

  • 実は、解決するべき問題がない先に発明してしまって、後づけで問題を探すような「用途不明の大発明」に多いケースです。何に使うのか分からない商品を先につくってしまうと、
    用途探しに長い時間がかかることもあります。

    自分が思いついた商品に思い入れが強いアイディアマンほど、
    周囲の人間はめんどくさがって厳しいツッコミをしてくれないこともあります。

    ありもしない問題を無意識に捏造してしまうこともあります。

    問題がないところに事業を成立させるのは非常に困難なので、
    たとえ商品やサービスをすでにつくってしまっていても、
    ゼロに立ち戻ってやり直す勇気が必要です。

    • カネを払うほど深刻で緊急な問題ではない血がドクドク流れているような深刻な痛みが今まさに発生している問題ならば、
      ビジネスは成立しやすいです。

      しかし、たいした痛みがなく、「いつか解決できればいい」程度の問題ならば、
      ビジネスを成立させるのは非常に難しいです。

      その問題によってどれぐらいの余計なコストが発生しているのか、
      問題の深刻度を定量化しましょう。プライシングの重要なヒントになります。

      問題の緊急度も定量化しましょう。
      今なのか、1か月後なのか、3か月後なのか、セールスサイクルの長さがわかるので、
      立ち上げ時の資金繰りを考えるには重要な情報となります。

    • すべての問題がこれで解決!
      問題のごく一部の範囲を解決するにすぎないにもかかわらず
      あたかも、その商品ですべての問題を解決するかのように勘違いするケース。

      解決できる問題の範囲が狭いのに、
      「これ一台ですべて解決!」という過剰な売り文句を伝えてしまうと、
      顧客満足度を下げてしまいます。

      また、広い範囲の問題をカバーするためには
      バンドリングやパートナーリングの必要であることを見落としてしまうこともあります。

      ワンストップサービスなどの総合化は本来はベンチャーがとれない戦略なので、
      解決できる問題の範囲について冷静な定義が必要です。

    • 問題意識を啓蒙する必要がある「顧客の声なき声に答える」 「潜在需要を狙う」など、
      いろいろな言葉で表現されることがありますが、
      顕在化されていない問題をターゲットとしている事業計画をよく見かけます。

      自分の問題を声にさえできない顧客は、
      実はそんなに困っていないニーズの弱い客だったり、
      少なくともカネを払ってくれない客です。

      問題意識を啓蒙するのは非常に時間がかかるので、
      立ち上げ期のBurn timeが短いベンチャーには向かないビジネスです。

      「けーもー」「けーもー」と10回連続で言っても、
      「もうけ」「もうけ」と聞こえるようにはなりません。

    • 顧客の問題ではなく、実は供給側の問題横文字が飛び交うIT業界などにはよくあるケースですが、
      問題と呼ばれているものが本当は業者側が作り出したBuz Wordであって、
      実は、顧客の問題ではないケース。

      ミイラ取りがミイラになるように、
      供給側の人間でもBuz Wordを本気で信じてしまう人がいます。

      供給側が捏造した問題には永続的な実需はなく、
      ニーズだとは言えません。

      最終的にお金を支払う顧客が抱える問題でない場合は
      ベンチャーがわざわざ取り組むべき問題ではないと割り切りましょう。

  • 問題に名前がない問題の名前が一言で表現できないケースです。商品に商品名が必要なのと同じくらい、問題には名前が必要です。

    商品名を顧客が検索エンジンで検索することはあまりなく、
    検索されるのはあくまで問題の名前だからです。

    資金の潤沢な製薬会社ならば、
    「●●シンドローム」などの病名をつくって世に広めることも可能ですが、
    資金に乏しいベンチャーにとってはすでに世に知られた名前のある問題を選ぶ必要があります。

よくある事業計画書のテンプレートには「商品・サービスの概要」というセクションはあるのですが、
「問題」というセクションはあまりありません。

事業計画書の構成として「商品・サービスの概要」のセクションの前に、
「顧客の抱える問題」というセクションをよく実務では追加します。

商品自体よりも顧客の抱える問題について深く考えるほうが重要だと思うからです。

商品が存在することよりも、問題が存在することのほうが
事業成立条件としては重要です。

問題≒ニーズだからです。

商品がなくてもニーズさえ把握していれば、
後づけで商品を開発・調達することは比較的簡単です。

逆に、問題がないのに商品を押し付けようとしても、
事業は成立しません。

「No Problem」という状態が事業計画上は一番の問題です。

中級者でもよくある間違い
■ なかなかブツを見せない

「ブツ」とは、実物のことです。

よくある間違いは、なかなかブツを見せないことです。例えば、

    • アイディアを盗まれると思っているアイディアを盗まれるのを懸念して、商品を説明する前に守秘義務契約書にサインしてくれという人がいます。アイディアしかないのがバレバレ。
      参入障壁が低い商品であることがバレバレ。
      顧客や土地勘のある人からリアルなフィードバックを受けていないのもバレバレ。
      同じようなアイディアは他にも必ずある事実を分かっていないのもバレバレ。
      オープンな企業文化をつくる資質がないこともバレバレ。

      商品を見るだけのために守秘義務契約書をサインするVCは実際にはありません。
      事務処理がめんどくさいし、
      リアルビジネスを知らない被害妄想的な人間に訴えられてもめんどくさいからです。

    • もったいぶって後から見せたほうが効果的と思っているビジネスでは結論が先です。
      iPhoneの新作発表会でないかぎり、ベンチャーの新商品に他人はそんなに期待していません。
    • ブツより理念を聞いてほしいと思っているブツを見せる前に熱い事業理念からダラダラと説明を始める人がよくいます。しかし、起業した本人と他人との間の感情的な温度差は大きいので、
      他人はそんなに熱心に聞いてくれません。

      たとえ聞く気があっても、商品や業界に関する知識の差も大きいので、
      抽象的な説明は伝わらないのが現実です。

      先にブツを見せて、後からその商品の背景となる熱い想いを説明したほうが
      伝わりやすいのです。

  • ブツがないので、見せられない資金調達にせよ、商品の売り込みにせよ、麻薬の取引にせよ、
    ブツを見せられないということは商売相手としての資格がないということです。

    ただし、完成品の状態のブツを見せられないこともあるでしょう。

    ブツには、試作品、写真、動画のデモも含まれます。
    とにかく、見せられるものを見せましょう。

時間がなくてもブツを見せましょう。
プレゼン時間7分しかないビジネスプランコンテストでも必ずブツを見せるようにしています。

コストをかけてもブツを見せましょう。
輸送費がかかっても小型飛行機をプレゼン会場に運んだこともあります。

見せるだけでなく、触ってもらいましょう。
ビジネスプランコンテストではわざわざ審査員にブツを回覧したこともあります。

ブツで五感に訴えることは、
ただでさえ眉唾と思われがちなベンチャー事業にとっては重要です。

どのような形でもいいので、とにかく早くブツを作り、
顧客にブツけてリアルな反応を確かめることが重要です。

上級者の使うテクニック
■ 「○○屋」という自負

どんな商売にもマイナスのイメージは必ずあります。
心無い人からは「○○屋」と嘲笑されることもよくあります。

「ラーメン屋」 「Tシャツ屋」 「保険屋」 「広告屋」

「他の○○屋と同じにしてほしくない」
「○○しかできないとは思われたくない」
「○○は自分の一生をかけるに値する商売ではないかもしれない」
と、初級者は、自分の商材に妙なコンプレックスを持っていて、
「はい、いわゆる、○○屋です」と言い切れず、
自己紹介を聞いても、結局、何を売っているのかさえ分からないことが結構あります。

上級者は、一部の同業他社の残念な現状は百も承知で、
それでも「○○屋」であることに誇りを持っています。

有能な人に限って、「僕はコレしかできない」と謙遜し、
どんなに卑近な商材でも自分の商品には社会的な意義を発見します。

上級者は、「おい、そこの○○屋」と言われても、
少々カチンときても、「へい、まいど」と笑顔で振り向くことができます。

編集後記: プログラマー募集

入野の義理の父は、10か国語以上をしゃべるユダヤ人の言語学者で、
日中韓辞典研究所(CJKI)という会社の社長です。

私もCJKIの取締役ですので、この場をお借りして、
プログラマ人材の募集要項をお知らせさせてください。

会社紹介

Computational Linguisticsという難解な分野の会社ですが、
平たく言うと、「辞書屋」です。

カナダ人、アメリカ人、中国人、日本人、イタリア人、韓国人など
多国籍のメンバー15人が働くアットホームな会社ですが、
Google、Yahoo、百度、Mirosoft、IBMなどの検索エンジンや機械翻訳エンジンを
直接のお客さんとしてきたIT×言語学の企業です。

会社の歴史を少しお話しますと、
社長のジャックは、漢字に魅了され、39年前に来日。
自分が漢字の学習に苦労した経験から
外国人が漢字を学習するために最適な辞書をつくりたいと決意しました。

しかし、問題は資金。

翻訳や講演活動で日銭を稼ぎながらも、
寄付に頼るしかありません。

企業や団体に寄付のお願いをしましたが、
見知らぬ外国人がいきなり訪問してきて、
「漢字の辞書を作るので、お金ちょーだい」と言っても、
お金を出してくれる人は当然ゼロでした。

それでも、あきらめずにいると、
最初に寄付してくれたのが、
生前の松下幸之助さんでした。

社会的意義を一番初めに理解していただき、
当時のお金で100万円を個人として寄付してくれたのです。

その他、昭和女子大の人見学長やトヨタ財団、各企業の方々から
あたたかいお金を2億円以上いただき、
10名前後のスタッフの血と汗の努力と16年の歳月をかけて、やっとこさ、
講談社から「Kanji Learner’s Dictionary」を発売することができました。

辞書の世界ではベストセラーの8万部が売れ、
在日外国人だけでなく、世界中の日本語学習者に大ウケし、
わざわざルーマニア語版を出版してくれたコアなファンもいました。

現在の日中韓辞典研究所は
検索エンジンや機械翻訳の時代になったので、
紙の辞書をつくっているわけではありませんが、
これが原点の会社です。

検索エンジンや機械翻訳は言語学とITの最先端であるのは確かですが、
地道な辞書づくりに異常なぐらいの情熱を注ぐ会社です。

募集職種:プログラマー
  • 自然言語処理(辞書データベース)のためのプログラミング
  • iPhone/Androidアプリの作成
  • Linux/Windowsのシステム運用管理
応募条件

学歴/国籍/年齢不問。

必須条件は、プログラミングスキルのみです。

ただし、
ハルペンジャックや他のプログラマー、編集者と一緒に、
「世界初」や「日本初」の先例のない難しい問題を解決することが求められるので、
かなり高いプログラミングスキルと知的タフネスが必要です。

日本語の動詞活用形の変換プログラムの話をするカナダ人とユダヤ人に
日本人の私がついていけないという感じです。。。

弊社のプログラミングテストを受けていただきます。
1つ以上のプログラミング言語の高いスキルと経験があればOKですが、
Pythonができれば尚可です。

必須ではないが望ましい条件は、語学力。

メンバー間で使用する言語は英語もしくは日本語です。

自然言語処理対象の言語は、中国語、アラビア語など多岐にわたりますが、
その言語そのものをしゃべれなくても結構です。

多国籍メンバーと働きますので、海外生活経験があれば尚可。

待遇

正社員
月給:能力と経験に基づき応相談。 ※ IT業界で言うと、「中の中」程度です。あまり期待しないでください。
勤務時間:9:00-18:00 ※ ハードな仕事ですが、残業はありません。みなさん18:00に帰ってます。
社会保険完備、交通費全給
完全週休2日制(土・日・祝祭日)

応募方法

履歴書・業務経歴書をメールに添付し
TO: cjkicjki@cjki.org (採用担当 相馬)
CC: irino@linzylinzy.com (入野)
へご一報ください。

本日は以上です。

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