行政書士・司法書士に頼らず会社設立する方法

司法書士・行政書士・税理士に頼らず自力で会社設立する方法

会社設立は士業に登記手続きを代行してもらってもいいですが、
自分ひとりで自力で行うこともできます。

自力で設立するか、手続代行をしてもらうかどうかの決断は、ページ最後にまとめます。

まずは、どのようなステップになるのかを概要レベルで把握してください。

サラリーマンの方が独立起業し、株式会社を登記する場合のステップを簡単に説明します。

タスク期間は早くても2週間。タスク工数は各種の書類テンプレートがあれば7人日ぐらい。余裕をもって、会社設立予定日の25日ぐらい前からタスクを開始しましょう。

まずは、個人としての諸手続
■ 「離職票」を退職した会社からもらう

会社に「離職票を自宅に郵送してください」とお願いしましょう。1週間ほどでできるのが普通です。

■ 1日も早く失業給付の手続きにハローワークへ行く

ハローワークへ離職票を持って行って、「失業給付の手続に来ました」と言いましょう。失業給付をもらえる日付はこの申請手続をした日付から計算されるので、離職票を受け取ったら1日も早く手続に行きましょう。

■ 個人の健康保険を任意継続

普通、前職の健保組合に6ヶ月くらいは継続加入できます。

■ 受給資格者創業支援助成金を申請

創業後3か月以内に支払った経費の3分の1。支給上限:200万円まで。
※法人登記をしてしまった後に申請すると貰えないので、登記前に申請しましょう。

■ その他の創業助成金を一応調査

シニア創業を応援する助成金(45歳以上が3人以上で創業など)などがあります。

一緒に起業する人との作業

取締役になってくれる人、資本金の出資をしてくれる人、発起人(≒取締役)になってくれる人と相談したり、事務手続きをしてもらう必要があります。

■ 会社の基本的な設計を検討

商号、会社の目的、所在地、取締役、監査役、資本金、出資比率などを検討します。

■ 取締役・監査役の就任承諾書の作成

取締役や監査役になってくれる人に「取締役・監査役に就任してもよいです」という旨の承諾書に押印してもらいます。

■ 資本金の払込、現物出資

預金通帳のコピーが設立書類の一つとなります。
個人の銀行口座でかまわないので代表のあなたの銀行口座に、出資者の名前と出資金額が分かるように銀行振込をしてもらいます。代表のあなたも預金からあえて一度預金引出をして、出資金額が分かるように再度自分の銀行口座に振込をしてください。
現物出資は手続が面倒なわりには実質的な効果はないで、忘れてください。資本金は現金を原則するのをおススメします。

■ 発起人(≒取締役)に個人実印の印鑑証明書を取ってもらう

発起人とはほとんどの場合取締役のことです。発起人(≒取締役)の実印の印鑑証明が必要です。「実印の印鑑証明を取っておいて、私に預けてください」と発起人におねがいしてください。

■ 発起人に個人実印を借りる

定款作成をあなたに委任してもらうため、発起人の実印を押してもらう必要があります。「実印の印鑑証明を取っておいて、私に預けてください」と発起人におねがいしてください。
「実印を貸すのはちょっと・・・」というケースもありますが、差し支えなければ、実印を借りておくと書類作成に便利です。

■ オフィス探し

自宅SOHOにする方は賃貸契約書に事務所としての使用してよいと書いているかどうかを確認しておいてください。事務所として使用してはいけない場合でも、大家さんやマンション管理会社、マンション管理組合と交渉しましょう。

■ 発起人会の開催・議事録の作成

「取締役・監査役は誰と誰です」という旨を記した発起人会の議事録を作成し、すべての発起人の実印を押印してください。

■ 設立取締役会の開催・議事録の作成

本店所在地の決定という旨を記した取締役会の議事録を作成し、すべての発起人の実印を押印してください。

いよいよ、株式会社登記の手続

書類作成作業以外に出かけなければいけない所は2つだけです。
・定款を作成 ≒ 公証役場へ書類提出
・定款以外の登記書類を作成 ≒ 法務局へ書類提出

定款の作成のための作業
■ 登記の市区町村を決定

オフィス探しを探して決定した場所の登記の市区町村を決定

■ 類似商号調査

法務局の場所はこちら
法務局に行って「商号調査に来ました」と伝えてください。
会社名の一覧ファイルを調べて、会社の名前がカブってないかを調べます。

■ 印鑑の作成

ネットが早いし安いです。7-8千円くらい。角印は作ってもいいけど、実際には使わないので、代わりに封筒などに押すための住所印を作ったほうがましです。

■ 定款の作成

定款を3部作成します。
買収防衛策などを盛り込まない限り、ほとんどの会社の定款は皆同じようなものです。定款のテンプレートを活用しましょう。

3部印刷して捺印/捨印/割り印をしてホッチキス止めしておきます。

■ 定款委任状の作成

発起人が複数の場合、定款作成をあなたに委任してもらうため委任状が必要です。委任状にすべての発起人個人の実印を押印します。

■ 書類を整理して公証役場へ行く

公証役場の場所はこちら
公証役場の受付で「定款認証お願いします」といえば、10分で確認してハンコを押してくれます。
公証役場で払う費用は
・ 定款認証手数料50000円
・ 定款謄本作成料約1000円
なので、収入印紙とあわせて約10万円手持ちで必要です。
持って行く書類は
・ 定款3部
・ 定款委任状
・ 印鑑証明書(原本)
・ 個人実印(できれば)
・ 収入印紙40000円
※収入印紙は公証人役場で販売してないことがありますので、郵便局などで事前に購入してください。収入印紙は自分で貼らないでください。公証役場で張ってくれます。

定款以外の書類(登記書類)を提出するための作業
■ 株式会社設立登記申請書の作成

法務局御中の「こんな会社を設立します。提出書類の一覧はこれこれです。」という旨の書類です。

■ 銀行の預金通帳をコピー

資本金の払い込みを受けた銀行の預金通帳の表紙と出資者の払込金額が分かるように明細のページをコピーしてください。

■ 出資金・現物出資などに関する調査書を作成

「確かに、全額出資金の払い込みを受けました」という旨の書類を作成します。

■ 株式払込証明書

「確かに、株式として全額出資金の払い込みを受けました」という旨の書類を作成します。

■ 書類を整理して法務局へ行く

法務局の場所はこちら
法務局の受付で「株式会社の登記申請をお願いします」といえば、受け付けてくれます。
法務局で払う費用は株式会社の登記手数料150000円。
持って行く書類はすべて作成済みのはずです。
・ 定款
・ 株式会社設立登記申請書
・ 取締役会の議事録
・ 発起人会議の議事録
・ 取締役の就任承諾書
・ 監査役の就任承諾書
・ 出資金・現物出資などに関する調査書
・ 株式払込証明書
・ 銀行の預金通帳のコピー(表紙と明細)
これらの書類に不備がなければ、「約1週間後に再び来てください。登記簿などを受け取れます。」と言われます。

以上が「株式会社の登記」までのステップです。
これで「会社ができた!」と一応言えます。
ちなみに、会社の設立記念日は法務局に登記申請を提出した日になります。

ただし、ここまではあくまで「登記」までのステップです。
登記後も各役所へ提出しなければならない書類はたくさんあります。
・ 社会保険事務所
・ 税務署
・ 労働基準監督局
など
タスクは登記までと同じような期間と工数がまたかかります。

自分で登記手続をするか、手続代行をしてもらうかどうか

自分で登記手続をする理由は以下のようなケースがあります。

■ 創業経費を節約できるから

会社設立の代行費用は約10万円前後が相場です。これらの費用を浮かせることができます。

登記代行サービスを安くする代わりに、記帳代行・決算サービスも必ず購入する条件でつけている士業もあります。設立時のコストだけでなく、年間を通したトータルコストと付加価値をよく検討して依頼しましょう。

■ 結局、自力のほうが早いから

「手続代行が本当に時間節約になるか?」を考えましょう。本ページを読めば分かるとおり、会社設立タスクの多くは、銀行口座への振込など結局はあなた本人しかできないタスクです。司法書士、行政書士、税理士にお願いしても、「この書類のココに記入してください」とあなたが記述しなければならない量は、自分で設立する場合と結局変わりません。むしろ、郵送での書類のやり取りのために、余計に時間がかかります。

■ 登記手続きの時間を作れるから

取引先への営業などのために忙しいので、手続の代行をおねがいする場合もあります。
・ あなたにしかできない
・ 手続代行費用(約10万円)以上の付加価値を生むことができる
という二つの条件を満たすタスクに忙しい場合、手続の代行をお願いしたほうがいいでしょう。

でも、登記手続きは基本的に書類を作って、公証役場と法務局へ出かけるだけです。その時間を作れるのであれば自力で登記手続きをしてもよいでしょう。

■ 登記後の役所届出は結局自力でやらないといけない場合もあるから

会社を設立するというのは法務局への登記だけでは終わりではありません。法務局への登記後にも税務署への青色申告申請や社会保険事務所への社会保険適用申請、労働基準監督局への届出などが必要です。
ところが、特に税理士は法務局への登記代行までしかサービスしないところもあります。社会保険労務士と提携していない税理士事務所であると、登記が終わると「社会保険事務所へは自分で届出してください」という話になることもあります。「結局自分で届出するぐらいならば最初からやってみよう」という人は登記手続きから自力でやるのがいいかもしれません。

■ 手続に対する漠然とした不安はないから

士業に依頼する理由は「手続に対する漠然とした不安」ではないでしょうか?ほとんどの人は会社を設立した経験はないので、「会社をつくる」って大変なことだと漠然と思っている方が多いと思います。
でも、会社設立タスクの多くは単純な書類作成です。公証役場や法務局は一見敷居の高い組織に思えますが、質問すれば丁寧に教えてくれます。
「それでも、書類作成する自信がない」という社長は士業に依頼したほうがいいと思います。

在職中に自力のつもりで書類作成にとりかかるのがベスト

実は、そもそも、「自分で登記手続をするか」、それとも「手続代行をしてもらうか」と最初から2択の問題として捉えること自体が間違っていることもあります。

特に、サラリーマンから起業をしようとしている方。
通常は登記手続きは会社を退職してから始める方が多いですが、私が個人的に最もおススメしているのは、まだ会社を辞める前の在職中に自力で登記するつもりで、書類をある程度そろえておくことです。

定款や法務局へ提出する書類の作成などの80%ぐらいのタスクは会社を辞める前にある程度完了することができます。
そして、会社を辞めた後に、残り20%の作業をするのがベストです。
もし会社を辞めてから時間の余裕があれば、自力で残りの20%の作業をしていまい、もし会社を辞めてから時間の余裕がなければ、士業に途中から投げてしまうという方法です。

本日は以上です。

入野

事業計画書のパワーポイントのテンプレート